金属アレルギーでもインプラントは可能?注意するポイントも解説
2025.10.17

インプラントでは口腔内を切開して、金属のインプラント体を埋め込む手術が行われます。
金属アレルギーをお持ちの方や、もしかしたら金属アレルギーが発症するかもと心配な方は、インプラントの治療ができるか心配かもしれません。
もし金属アレルギーがあっても、インプラントの治療が可能な場合がほとんどです。
この記事では、インプラントを受ける際に金属アレルギーが起こったら、どのような症状があるのか、注意点などを詳しく解説します。
金属アレルギーがあって不安な方は、インプラントの治療を始める前にぜひ参考にしてください。
金属アレルギーでもインプラントは可能
結論から言うと、金属アレルギーがあってもほとんどの場合インプラント治療は可能です。
多くのインプラントに使用されている医療用チタンは人体に馴染みやすく、金属アレルギーが起こりにくいとされています。
チタンは他の金属と比べて体液中でイオン化しにくく、金属イオンが溶け出しにくい性質をもっているため、アレルギーが発生する確率が低い素材です。
しかし、例え純チタンであってもチタンに対するアレルギーが起こる可能性はゼロではないため、治療前にアレルギー検査をしておきましょう。
では、チタンアレルギーだとしたらインプラントができないのかというと、必ずしもできないわけではありません。
ジルコニアインプラントは金属アレルギーが起こらない素材であるセラミックの一種で、チタン製に比べて費用は高額になりますが、金属アレルギーでも使用できます。
どの素材を使用するか、金属アレルギーのリスクにどう対応するかは、歯科医師とよく相談して決めましょう。
金属アレルギーとは
金属アレルギーとは、汗や唾液などに溶け出した金属の成分が皮膚や口腔内に触れて、免疫反応が起こるアレルギー症状です。
後述しますが、湿疹や痒みなどの症状が現れ、症状の程度は人それぞれ異なります。
ここでは、金属アレルギーが起こる素材や発症の可能性について詳しく解説します。
金属アレルギーが起こりやすい素材
金属アレルギーには、アレルギー症状の起こりやすい素材があります。
- コバルト
- ニッケル
- クロム
- パラジウム
- 金
- マンガンなど
これらの金属は汗や唾液などの体液に溶け出しやすく、イオン化傾向(水溶液中で陽イオンになりやすさの値)が高いものです。
厚生労働省の報告によると、パッチテスト(アレルギー反応を確認するテスト)の結果はニッケル、コバルト、金のアレルギー反応が多く見られたとされています。
インプラントだけでなく、家庭用品(時計やメガネ、アクセサリーなど)の皮膚接触で起こることもあり、日常生活の中でも注意が必要です。
(参照:「平成27年度 家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告」厚生労働省)
金属アレルギーは誰でも発症する可能性がある
今まで金属アレルギーではなかった方も含め、誰でも金属アレルギーを発症する可能性があります。
アクセサリーや金属でできた道具などを使ううちに、金属の成分が溶け出して金属イオンが蓄積されて免疫反応が起こるのが理由です。
また、気づいていないだけで金属アレルギーをもっているケースもあるため、不安な方はインプラント治療前にパッチテストを行うことをおすすめします。
インプラント治療後に起こる可能性がある金属アレルギーの症状は?
インプラント治療後に金属アレルギーになった場合、どのような症状が起こるのかを知っておきましょう。
以下のような症状が現れたら、金属アレルギーを疑い歯科医師に相談してください。
接触性皮膚炎
接触性皮膚炎とは、主なアレルギー症状が金属に直接触れている部分を中心に現れるのが特徴です。
インプラントでは、インプラント体を埋め込んだ部位に炎症や痒み、湿疹などの症状が起こることが多いです。
症状が重いと、水疱のような状態になったり、酷く腫れたりすることもあり、ステロイドを用いた治療が必要なこともあります。
接触性皮膚炎の場合、直接金属が触れている部分に症状が現れるため、比較的アレルゲンの特定がしやすく、接触を回避することで症状の軽減が期待できます。
全身型金属アレルギー
全身型金属アレルギーは、皮膚以外の粘膜、インプラントでは口腔内から吸収された金属成分がアレルギーを引き起こし、全身に症状が現れるものです。
インプラントが原因とすぐに特定できない場合は、パッチテストの他に血液検査などの検査が必要なケースもあります。
インプラント治療で起こる全身型金属アレルギーは、主に以下のようなものが挙げられます。
口腔扁平苔癬(こうくうへんぺいたいせん)
口腔扁平苔癬とは、舌や頬の内側、歯肉、唇などの粘膜に白いレース状の腫れや赤く腫れる炎症が起こる慢性炎症性疾患です。
口腔内に痛みや不快感があり、症状によっては食事や会話がしにくくなるケースもあります。
放置したり、症状が重いと全身に腫れや炎症が広がる恐れがあるため、症状が現れたら早めの医療機関を受診してください。
口腔扁平苔癬は40代以降、50~60代の女性に多く見られ、閉経によるホルモンバランスの影響の可能性があると考えられていますが、直接的な関係があるかはまだはっきりわかっていません。
掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)
掌蹠膿疱症は、膿が溜まった水疱(膿疱)が現れ、痒みや痛みを感じます。
手や足などの他の部位に発症することが多く、改善と悪化を繰り返すのが特徴です。
始めは水疱のようなものが現れて、徐々に中に膿が溜まって膿疱へ変わっていきます。
その他のアレルギー反応
上記の2つ以外にも、金属アレルギーによる反応には以下のようなものが挙げられます。
- 湿疹
- 舌の炎症
- 口内炎
- 唇の腫れ
- 水ぶくれなど
これらの症状は全身の皮膚炎につながる可能性もあるとともに、症状が重いとまれに味覚に影響が出ることもあるため、注意が必要です。
金属アレルギーの方がインプラントを受ける際の注意点
もともと金属アレルギーがあると自覚している方は、インプラント治療を受ける前に以下のようなことに注意しましょう。
金属アレルギーであることを歯科医師に伝える
インプラント治療を受ける前に、金属アレルギーがあることを、必ず歯科医師に伝えてください。
どの金属にアレルギー反応があるのか、チタンアレルギーの有無など、できるだけ詳しく申告することが重要です。
もしアレルゲンが不明な場合は、パッチテストを行えば調べられます。
事前にパッチテストを受ける
チタンではなくても他の金属アレルギーがある方や、金属アレルギーの不安がある方は、インプラント治療の前にパッチテストを受けましょう。
パッチテストは、シール状のパッチを皮膚に貼ることで、どのような金属にアレルギー反応が出るかを判定する検査です。
インプラント治療を受ける歯科医院や、皮膚科でも受けられます。
インプラントに使われているチタンへのアレルギー反応がなければ、インプラント治療が可能です。
ただし、チタンアレルギーがあると判明した場合は、ジルコニアインプラントの検討をしたり、他の治療(ブリッジや入れ歯など)に切り替えたりすることもあります。
純度の高いチタンを選ぶ
口腔内に埋め込むインプラント体はチタンが使用されている場合が多いですが、全ての種類がチタンだけで作られているわけではありません。
他の金属と混ぜて合金になっている場合もあるため、インプラントを受けるときはチタンの純度を確認する必要があります。
メーカーにより合金の割合は異なり、純チタンを使用しているメーカーもあります。
純度が高ければアレルギー反応が起こる可能性が低くなりますが、合金の成分によってはリスクが増すかもしれません。
パッチテストの結果を見ながら、どの素材のインプラントにするか歯科医師とよく相談しましょう。
アバットメントの素材を確認する
アバットメントは、顎の骨に埋め込んだインプラント体と被せ物(クラウン)をつなぐためのパーツのことです。
口腔内の粘膜に直接触れる可能性があるパーツのため、アバットメントの素材も確認しておきましょう。
純チタン、チタン合金、ジルコニアなど、メーカーによりさまざまな金属が使われています。
被せ物の素材を確認する
被せ物はクラウン、人工歯とも呼ばれ、外側から見える歯の部分です。
使われている素材は、セラミックやジルコニアなどの金属を含まないものや、金属が使用されているものなどさまざまです。
被せ物の素材を金属を使わないメタルフリー素材にすることで、金属アレルギーのリスクを減らすことができます。
セラミックやジルコニアは審美性が高いため、見えやすい前歯によく使われます。
インプラント後に金属アレルギー症状が起こったら?
事前のパッチテストで問題がなかったとしても、インプラントの治療後に金属アレルギーを発症することもあります。
もしも金属アレルギーの症状が現れた場合は、以下のように対処しましょう。
すぐに医療機関を受診する
インプラントの治療後に、金属アレルギーかもしれない症状が現れたら、すぐに医療機関を受診してください。
口腔内に違和感があるくらいの軽度な場合は様子を見てしまう方もいますが、放置すると悪化するリスクがあるため歯科医院で診察を受けましょう。
アレルギー検査を行い、インプラントが原因の金属アレルギーか、他に原因があるのかを特定します。
口腔内ではなく全身のアレルギー症状が現れたときは、インプラントが原因かわからず皮膚科を受診することもあるかもしれませんが、診察時に「インプラント治療を受けた」と申告しましょう。
原因を取り除く
原因がインプラントだと判明したら、原因となるものを取り除く必要があります。
チタンによる金属アレルギーを発症していた場合は、顎の骨に埋め込んだインプラント体を除去しなければなりません。
なお、被せ物が原因だった場合は、取り外して他の素材で作られたものに交換することが可能です。
いずれにしても、改善には金属アレルギーの原因を取り除く必要があるため、そのままインプラントを使い続けることは難しくなります。
他の補綴治療へ切り替える可能性がある
インプラント体に使われているチタンが原因で金属アレルギーを発症した場合は、他の補綴(ほてつ)治療へ切り替えとなる可能性があります。
インプラント治療を選択した方は、歯根が残っていない(抜歯や抜け落ちなどで歯の根がない)状態のため、入れ歯やブリッジへが選択肢として挙げられます。
ただし、入れ歯やブリッジにも金属が使われている場合があるため、金属アレルギーに配慮された素材を選び治療することが重要です。
まとめ
多くの場合、純度の高いチタンを使用しているインプラント治療は、金属アレルギーの方でも受けられるケースが多いです。
カウンセリングで歯科医師に金属アレルギーを申告して、パッチテストや血液検査などを行い、アレルゲンをきちんと把握したうえで素材を選びましょう。
辻岡歯科医院は、一般歯科からインプラントまで幅広い治療実績があり、40年のインプラント治療実績があります。
インプラントは長期安定や信頼性の高いスイスのストローマンインプラントを採用し、金属アレルギーの患者様にも対応しております。
金属アレルギーが不安でインプラント治療を迷っている方は、辻岡歯科医院で毎日行っている「インプラント無料相談会」へぜひご相談ください。