インプラント治療から数年後に痛みが出る理由は?対処法や予防法を解説
2025.10.30

インプラント治療をしてから数年後に痛みが出てきたら、インプラントが上手く機能していないのではないかと心配になってしまうかもしれません。
実際に、インプラント手術後から数年経ってから痛みを感じるケースでは、トラブルが起こっている可能性があります。
この記事では、痛みが出てくる原因や予防のための口腔ケアのポイントなどを詳しく解説します。
インプラントがダメになるのではないかと不安な方や、痛いときの対処法を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
インプラントとは

インプラントとは、なんらかの原因で歯を失った場合に人工の歯を替わりに使うための治療です。
インプラントは第二の永久歯とも呼ばれ、インプラント体、アバットメント、被せ物の3つのパーツで構成されていて、高い審美性と歯の機能回復を目指す治療です。
顎の骨にインプラント体(人工歯根)を埋め込む手術を行い骨と結合してから、インプラント体と上部構造である被せ物(クラウン)をつなぐアバットメントを取り付け、最後に被せ物を装着します。
インプラント体と骨との結合が強いほどインプラントの安定性が高く、天然歯と変わらなく噛める強度が期待できます。
インプラント治療から数年後に痛む理由は?

インプラント手術の直後ではなく、数年後に痛む症状はいくつかの理由が考えられます。
ここでは、インプラント治療から数年後に痛む原因について解説します。
インプラント周囲炎
インプラント周囲炎とは、細菌感染により歯肉や骨に炎症が起き、歯周病に似た症状が現れるインプラント特有の歯の病気です。
- 歯肉の腫れ
- 歯肉が痩せる
- 出血
- 膿の発生
- 歯肉や骨が痛む
- 触ると歯肉がぶよぶよしている
不十分なケアやメインテナンス不足で起こることが多いため、定期的に歯科医院を受診していれば早期発見できる可能性も高まります。
インプラントは歯根(歯の根っこ)がない状態で神経が通っていないため痛みを感じにくく、インプラント周囲炎にも気付きにくい特徴があります。
また、進行が早くすぐに治療をしないと歯肉が下がってインプラント体が露出したり、脱落したりする可能性もあるため、注意が必要です。
周りの歯のトラブル
インプラント自体は人工歯のため虫歯にはなりませんが、周りの天然歯は虫歯や歯周病になる恐れがあります。
口腔内を自分で確認するのは難しいため、痛みを感じたらインプラントの問題と誤解することも少なくありません。
実際にはインプラントではなく周囲の歯が虫歯や歯周病だったケースも多く、それぞれの治療が必要です。
インプラント手術後は定期的な通院が必要なため、周囲の歯の状態もチェックしておくと良いでしょう。
アバットメントのネジが緩んでいる
インプラント体と被せ物をつなぐアバットメントのネジが緩むのも、痛みが発生する原因のひとつです。
手術後はしっかり締まっているネジが、何年も噛む力を受け続けると少しずつ動いて、緩んでしまうことがあります。
アバットメントが緩むと、被せ物がぐらついて噛んだときに痛みを感じます。
そのままにしておくと破損する恐れもあるため、歯科医院を受診しましょう。
定期的な歯科医院への通院の際に、アバットメントの緩みも確認することで、早めに対処できます。
噛み合わせの変化
インプラント手術のときは、事前に検査を行い噛み合わせを考えた治療計画が立てられますが、経年で噛み合わせが変化することがあります。
加齢による歯肉や骨の変化、周辺の虫歯や歯周病治療による影響などで、少しの変化でも噛み合わせが変わってしまいます。
これによりインプラントに負担がかかり、痛みや違和感が現れるのです。
定期的に噛み合わせのチェックを行い、状態によっては調整が必要です。
インプラントと骨の間のヒビ
歯ぎしりや食いしばりの癖がある方は、インプラントへ過剰な負荷がかかり、インプラント体や周囲の骨にヒビが生じることがあるため、注意が必要です。
骨にヒビが入ると、顎の周辺に痛みや違和感が出てくることがあります。
長年歯ぎしりや食いしばりを続けていると、インプラントの破損や摩耗などのトラブルが起こる可能性もあります。
就寝中に無意識に歯ぎしりや食いしばりをしてしまう場合は、マウスピースの着用がおすすめです。
スポーツや力仕事で歯をくいしばる機会が多い方には、昼間用のマウスピースもあるため、歯科医院へ相談してみましょう。
インプラント治療から数年後に痛むときの対処法

インプラント治療から数年後に痛みが現れた時は、放置せずに歯科医院に相談して、適切な処置をすることが重要です。
どのような対処法が考えられるのか、詳しく解説します。
インプラント周囲炎や虫歯の治療
痛みの原因を取り除くためには、インプラント周囲炎や、周囲の歯の虫歯治療が必要です。
歯を削ると噛み合わせが変わる可能性があるため、歯科医師と相談しながら治療しましょう。
インプラント周囲炎は、歯科医院でのクリーニングで歯垢・歯石(プラーク)の除去をするのが重要です。
中等度以上の場合は、抗菌薬や抗菌のマウスウォッシュなどを使用して、口腔内の細菌を抑制して炎症の進行を防ぐ治療を行います。
重度のインプラント周囲炎を発症している場合は、歯肉を切開して殺菌消毒をする外科的処置が必要になる可能性もあります。
アバットメントの調整
アバットメントのネジが緩んだことで痛むときは、アバットメントの調整を行います。
調整はネジを締め直すだけでできますが、どうして緩んだのかを確認しておきましょう。
経年によるものならば定期的なチェックをすることで、再び緩むのを防止できます。
アバットメントの緩みは、噛み合わせのバランスが悪くても起こることがあるため、注意が必要です。
また、ごくまれですが、被せ物の不適合や締め付け不足などの技術面で緩むこともあります。
噛み合わせの調整
噛み合わせの変化は経年により起こることが多く、インプラントの痛みの原因にもなるため、調整が必要です。
天然歯と比較するとインプラントは可動性が低く、噛み合わせが変化しても対応しきれないことがあります。
そのため、噛み合わせの変化に合わせて被せ物や周囲の歯のバランスを調整する「咬合(こうごう)調整」を行います。
定期的に咬合調整を行い、痛みが出る前の早期に噛み合わせを適切に保つことが重要です。
なお、歯ぎしりや食いしばりが噛み合わせに影響するほど強い場合は、マウスピースを装着することでインプラントへの負担を軽減できます。
インプラントの修理や交換
インプラント体やアバットメント、被せ物が破損すると、痛みや違和感が現れることがあり、修理や交換が必要になります。
多くのメーカー保証は10年ですが、適切な使用やメインテナンスが行われていない場合は保証が適用されないケースもあるため注意が必要です。
また、メーカーによってインプラント体のみの保証だったり、被せ物の保証があったりと対象が異なるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
インプラントの撤去
インプラントを維持するのが難しい場合は、撤去する選択がされることもあります。
インプラント周囲炎や加齢により、骨組織が破壊されて顎の骨が減少してしまう骨吸収が進行すると、インプラントが不安定になり、ぐらつきや痛みを伴うことがあります。
インプラントの交換で済むこともありますが、顎の骨の状態や全身の健康状態によっては、インプラントを撤去せざるを得ないかもしれません。
もしインプラントを撤去した場合は、ブリッジや入れ歯などの他の方法で歯の機能を補うことになります。
インプラント治療から数年後の痛みを予防するポイント

インプラント治療から数年後に痛みが現れた場合、さまざまな原因が考えられ、状態が悪いとインプラントを撤去しなければならないかもしれません。
そうならないように、痛みを予防するポイントを詳しく解説します。
日常の口腔内ケアが大切
インプラント治療は、日常の口腔内ケアがとても大切です。
インプラント周囲炎や周辺の虫歯、歯周病の予防はもちろん、毎日のケアをすることで口腔内の変化に気付きやすくなります。
ブラッシングや歯間ブラシ、デンタルフロスなどを使い、口腔内を清潔に保ちましょう。
適切なケアを行うことで、インプラントを長持ちさせることにもつながります。
定期検診を受ける
インプラント手術後は、定期的に検診を受けることが重要です。
痛みを感じていなくても、きちんと指示された頻度で通院していれば、例え問題が起こってもすぐに対処できます。
適切なメインテナンスを行っていれば、メーカーによっては一生使い続けることも可能です。
スイスのストローマン社の報告によれば、10年後のインプラント生存率は98.8%と高い結果が出ています。
トラブルを回避して快適にインプラントを使用するためにも、定期検診は欠かさず受けるようにしましょう。
(参照:「Large clinical study of dental implants yields impressive 10-year outcomes」ストローマン社)
クリーニングを受ける
日常の口腔内ケアだけでは落としきれない歯垢や汚れをきれいにするためにも、歯科医院でクリーニングを受けましょう。
しっかり歯磨きをしていても、長い間放置していては歯垢が溜まってしまいます。
定期検診だけでなくクリーニングだけでも歯科医院で受けられるため、こまめにクリーニングするのがおすすめです。
インプラント周囲炎の予防や虫歯のリスクも軽減できて、異変にも気づきやすくなるメリットにもなります。
禁煙する
喫煙習慣は、インプラントに悪影響を与えるため、禁煙が推奨されます。
タバコに含まれるニコチンは血流を阻害して、口腔内を始め全身に栄養や酸素が行き渡らなくなり、免疫力の低下につながります。
免疫力が下がると細菌感染によるインプラント周囲炎のリスクが高まる恐れがあるため、注意が必要です。
また、喫煙は骨吸収を促進してインプラント体と骨の結合に悪影響を与える可能性があると指摘されています。
上顎におけるインプラント喪失の危険性は、非喫煙者と比較して喫煙者は約5.6倍高いという研究もあります。
インプラント後の口腔内ケアのポイント

インプラント手術後は、セルフケアと歯科医院でのクリーニングでインプラント周囲炎や虫歯の痛みを予防しましょう。
ここでは、自宅で行う口腔内ケアのポイントを紹介します。
丁寧なブラッシング
インプラント治療後は、毎日の丁寧なブラッシングが大切です。
以下のようなポイントに気をつけて行いましょう。
- 力を入れすぎない
- 小刻みに振動させる
- 磨く順番を決める
強い力で歯に押し当てると、歯ブラシが広がって磨き残しが多くなります。
歯ブラシは握り込まず、鉛筆のように優しく持つと余計な力が入りません。
横に大きく動かすと磨き残しの原因になるため、歯を一本ずつ磨くイメージで、小刻みに振動させるのがポイントです。
歯と歯肉の間の汚れをかき出すように動かし、歯の裏は歯ブラシを立てて細部まで磨きましょう。
磨く順番を決めておくと、毎日同じ手順で磨けるため、磨き残しを防げておすすめです。
順番はどこからでも良いですが、表側と裏側がスムーズに磨けるように工夫してみてください。
歯間ブラシやデンタルフロスの活用
毎日の口腔内ケアには、歯ブラシだけでなく歯間ブラシやデンタルフロスを活用しましょう。
歯とインプラントの間には汚れや歯垢が溜まりやすいため、毎日のケアが必要です。
すき間が大きい箇所は歯間ブラシ、小さい箇所はデンタルフロスが適しています。
インプラント用の歯間ブラシもあるため、歯科医院で購入できるか相談してみましょう。
歯ブラシ・歯磨き粉の選び方
インプラント治療後のセルフケアには、歯ブラシや歯磨き粉の選び方も重要です。
歯ブラシは、毛先が細いものを選ぶと、歯と歯肉の間に毛先が入りやすく、汚れを除去しやすくなります。
細かい部分のブラッシングには、タフトブラシを使用すると効果的です。
電動歯ブラシや音波歯ブラシを選んでも良いですが、力加減が難しいため、使用前に歯科医院で磨き方を聞いておくと良いでしょう。
歯磨き粉の選び方は、インプラント治療後は特に気をつけてほしいポイントです。
- 研磨剤入りのものは避ける
- フッ素入りのものを選ぶ
歯の汚れを落とすのに研磨剤入りが良いように思えるかもしれませんが、インプラントとは相性が良くありません。
インプラントと歯肉の間に細かい粒子が入り込むことで、炎症を起こしてしまう可能性があります。
フッ素入りのものは、5,000ppm以上の高濃度フッ素の長期使用はチタンインプラントに影響を与える可能性がありますが、日本で一般的に利用されている1,500ppm以下であれば唾液で薄まるため問題ないとされています。
(参照:「フッ化物配合歯磨剤の利用はチタン製歯科材料使用者にも推奨すべきである」一般社団法人 日本口腔衛生学会)
まとめ
インプラント治療の数年後に痛むのは、インプラント周囲炎や噛み合わせの不具合など、さまざまな理由が考えられます。
しかし、多くは手術後の定期検診やメインテナンス、自宅でのケアの徹底により予防することができるものです。
また、インプラント周囲炎や周りの歯のトラブルがあっても、早期発見・早期治療ができれば改善が可能です。
異変を感じたらすぐに歯科医院を受診して、インプラントや口腔内の異常がないか診断を受けましょう。
辻岡歯科医院は、世界的に治療成績の良いスイスのストローマンインプラントを使用して、長期的にインプラントを安定してご使用いただけるように努めております。
40年のインプラント治療実績と豊富な経験をもとに、患者様お一人おひとりに適した治療をご提案させていただきます。
インプラントをして数年後の痛みにお悩みの方、痛む原因を知りたい方は、ぜひ辻岡歯科医院のインプラント無料相談会へお気軽にご相談ください。