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インプラントで全部の歯を取り戻す方法と費用・治療法ごとの違い

2026.07.31

歯をほぼ全部失った方が「インプラントで全部の歯を取り戻せるのか」を考えるとき、まず知っておきたいのは、1本ずつ14本を埋める必要はないということです。実際には4〜8本のインプラントで片顎すべてを支える方法が複数あり、費用も手術の負担も大きく変わります。

この記事では、全部の歯をインプラントで補う3つの治療法と費用、骨が足りない場合の対応、治療の流れまでを整理します。

全部の歯をインプラントにする方法は1本ずつとは限らない

全部の歯をインプラントにする方法は1本ずつとは限らない

「歯を全部インプラントにできるのか」と考えるとき、抜けた歯の数だけインプラントを埋めるイメージを持つ方が多いかもしれません。しかし実際には、片顎14本すべてにインプラントを埋入する方法は現実的ではなく、現在の全顎インプラント治療はもっと効率的な設計になっています。

片顎14本のインプラントが非現実的な理由

片顎の歯は前歯から奥歯まで14本あります。これを1本ずつインプラントに置き換えると、手術は長時間にわたり身体への負担が非常に大きくなります。費用も片顎だけで500万円以上、上下で1,000万円を超えることがあります。

さらに、歯を長期間失っていた方は顎の骨が痩せている場合が多く、14本すべてを埋入できるだけの骨量が残っていないケースがほとんどです。

こうした理由から、現在の全顎インプラント治療では少ない本数のインプラントで多くの歯を支える設計が主流になっています。

全顎インプラント治療の3つの方法

全部の歯をインプラントで補う方法は、大きく分けて3つあります。

どの方法も4〜8本のインプラントで片顎すべての歯を支えるという点は共通していますが、構造と取り外しの有無が異なります。

治療法インプラント本数(片顎)上部構造取り外し
オールオン4/オールオン64〜6本固定式のブリッジ(12歯分)取り外し不要(固定)
インプラントオーバーデンチャー2〜4本インプラントに留まる入れ歯自分で取り外し可能
インプラントブリッジ6〜8本固定式のブリッジ(複数に分割)取り外し不要(固定)

オールオン4は、片顎に4本のインプラントを埋め込み、その上に12本分の歯が並んだ一体型の人工歯を固定する方法です。奥歯側のインプラントを斜めに傾けて埋入することで、骨の厚い部分を活用できるため、骨が痩せている方でも骨造成なしで治療できる場合があります。

インプラントオーバーデンチャーは、2〜4本のインプラントで入れ歯を安定させる方法です。入れ歯がインプラントにカチッとはまるため、通常の総入れ歯のようにズレたり外れたりしません。自分で取り外せるので清掃がしやすく、費用もオールオン4より抑えられます。

インプラントブリッジは、6〜8本のインプラントを土台にして、固定式のブリッジを装着する方法です。オールオン4が一体型であるのに対し、インプラントブリッジは数本ずつのブリッジに分割されています。十分な骨量がある方に向いており、万が一の修理やメンテナンスでブリッジの一部だけを外せる利点があります。

治療法ごとの費用と特徴

治療法ごとの費用と特徴

全顎インプラントの費用を左右する最大の要素は「どの治療法を選ぶか」です。使用するインプラントの本数、上部構造(人工歯)の素材、骨造成の有無によって費用が大きく変わります。

治療法別の費用目安

治療法片顎の費用目安上下顎の費用目安
オールオン4/オールオン6200〜400万円程度400〜800万円程度
インプラントオーバーデンチャー50〜150万円程度100〜300万円程度
インプラントブリッジ250〜500万円程度500〜1,000万円程度

費用に幅がある理由は主に3つです。

  • 使用するインプラントのメーカーと本数
  • 上部構造の素材(ジルコニア・チタンフレーム・レジンなど)
  • 骨造成の有無(必要な場合は追加で10〜30万円程度)

メーカーや素材は仕上がりや耐久性に直結し、骨が痩せている方は骨造成の費用が上乗せになります。

全顎インプラントは自由診療のため保険は適用されません。ただし、噛む機能の回復を目的とした治療であれば医療費控除の対象になります(審美目的のみは対象外)。年間医療費が10万円(総所得金額等が200万円未満の方は総所得金額等の5%)を超えた分が所得から控除され、確定申告で税負担を軽減できます。

自分に合う治療法の選び方

治療法を選ぶ際は、費用に加えて噛む力・取り外しの有無・メンテナンスのしやすさも合わせて見比べることが大切です。

優先したいこと向いている治療法理由
しっかり噛みたい・固定式がいいオールオン4固定式で天然歯に近い噛み心地。取り外しの手間もない
費用をできるだけ抑えたいインプラントオーバーデンチャーインプラント本数が少なく、上部構造も入れ歯のため費用が低い
自分で取り外して清掃したいインプラントオーバーデンチャー入れ歯部分を外して洗えるため、清掃に不安がある方に向く
万が一の修理をしやすくしたいインプラントブリッジブリッジの一部だけ取り外して修理が可能

どの治療法が適しているかは、残っている骨の量や全身の健康状態、そしてご本人が日常生活で何を最も重視するかによって変わります。CT撮影で骨の状態を正確に把握したうえで、治療法の選択肢を具体的に絞り込むのが最初のステップです。

骨が痩せていてもインプラントはできるのか

骨が痩せていてもインプラントはできるのか

歯を長期間失っていた方や、合わない入れ歯を使い続けていた方は、顎の骨が痩せていることが少なくありません。「骨が足りないからインプラントは無理」と言われた経験がある方もいるかもしれませんが、骨造成という方法で対応できるケースがあります。

骨が痩せる原因と全顎インプラントへの影響

歯を失うと、その部分の顎の骨は噛む力による刺激を受けなくなります。刺激がなくなった骨は少しずつ吸収されて痩せていきます。総入れ歯を長く使っていた方は、入れ歯が歯ぐきを圧迫することでさらに骨の吸収が進んでいることがあります。

骨が痩せた状態でインプラントを埋入すると、インプラントが骨にしっかり固定されず、脱落のリスクが高まります。そのため、CT撮影で骨の厚み・高さ・密度を三次元的に確認し、インプラントを支えるのに十分な骨があるかどうかを手術前に正確に診断することが全顎インプラント治療の出発点です。

GBR法(骨造成)で骨を再生する

GBR法(骨誘導再生法)は、骨が不足している部分に骨補填材を置き、その上を「メンブレン」という人工の膜で覆って骨の再生を促す方法です。メンブレンの役割は、骨を作る「骨芽細胞」が増殖するスペースを確保し、骨にならない軟組織が入り込むのを防ぐことです。

GBR法を行った場合、骨が再生するまで3〜6ヶ月程度の待機期間が必要です。その後にインプラント埋入へ進むため、治療全体の期間はGBRなしの場合より長くなります。費用はGBR法単体で10〜30万円程度が目安です。

オールオン4は骨造成なしで対応できる場合がある

オールオン4の大きな特徴は、奥歯側の2本のインプラントを斜めに傾けて埋入する点にあります。斜めに埋入すると、インプラントが骨の面積の広い部分に接触するため、骨が薄い部位を避けながらしっかりした固定力を得られます。

この設計により、通常のインプラント治療では骨造成が必要な方でも、オールオン4であれば骨造成なしで手術できる場合があります。ただし、骨の状態によってはオールオン4でも骨造成が必要なことがあり、事前の検査で骨の状態を確認してから判断します。

全顎インプラント治療の流れと期間

全顎インプラント治療の流れと期間

全顎インプラント治療は、検査から最終的な人工歯の装着まで複数のステップで進みます。治療法によって異なりますが、全体の流れはおおむね共通しています。

治療の流れ

全体の流れは治療法によって大きく変わるわけではありませんが、ステップ3〜5の進め方には違いがあります。ここではオールオン4を例にとり、ブリッジ・オーバーデンチャーとの違いも合わせて整理します。

  1. 検査・診断(初回〜2回目):レントゲン・CT撮影、口腔内の診査、全身の健康状態の確認を行います。骨の量や質を三次元で分析し、インプラントの埋入位置を計画します。
  2. 治療計画の説明・同意:検査結果をもとに治療法の選択肢、費用、期間、リスクを説明します。
  3. 手術(インプラント埋入+仮歯装着):オールオン4では、抜歯・インプラント埋入・仮歯の装着を原則として1日で行います。手術は局所麻酔で実施し、手術当日のうちに仮歯を装着できる点が特徴です(食事開始のタイミングは医師の指示によります)。インプラントブリッジ・オーバーデンチャーでは仮歯を当日装着せず、治癒期間を経てから上部構造を作る流れになります。
  4. 治癒期間(3〜6ヶ月):インプラントが顎の骨と結合するまで待ちます。この間は仮歯で生活します。
  5. 最終上部構造の装着:骨との結合が確認できたら、型取りを行い、最終的な人工歯(ジルコニアやチタンフレーム等)を製作・装着します。
  6. 定期メンテナンス:装着後は3〜6ヶ月ごとの定期検診でインプラント周囲の歯ぐきや骨の状態を確認し、長期的な安定を維持します。

治療期間の目安

治療法治療期間の目安
オールオン4(骨造成なし)約3〜6ヶ月
オールオン4(骨造成あり)約6ヶ月〜1年
インプラントオーバーデンチャー約3〜6ヶ月
インプラントブリッジ約6ヶ月〜1年

上顎は下顎に比べて骨の密度が低く、インプラントと骨が結合するまでの期間が長くなる傾向があります。下顎であれば3ヶ月程度で結合するケースが多い一方、上顎は4〜6ヶ月かかるのが一般的です。

インプラントで全部の歯を入れるメリットとデメリット

インプラントで全部の歯を入れるメリットとデメリット

ここで扱う「全顎インプラント」は、4〜8本のインプラントを土台にして全顎を補うオールオン4・インプラントブリッジ・オーバーデンチャーを指します。1本ずつ14本を埋入する治療ではありません。

総入れ歯から大きく生活の質が変わる治療ですが、デメリットも把握したうえで判断することが大切です。

全顎インプラント治療のメリット

全顎インプラント治療の主なメリットは、総入れ歯と比較したときの以下の4点です。

  • 顎の骨に直接固定されるため、総入れ歯より格段に強い力で噛める
  • 入れ歯のような金属のバネがなく、見た目が自然になりやすい
  • 入れ歯を外して洗う手間がない(オーバーデンチャーを除く)
  • インプラント周囲の骨は刺激を受け続けるため、総入れ歯のような急速な骨吸収を防げる

最大の利点は噛む力です。総入れ歯は歯ぐきで粘膜に乗せて支えるため噛む力が大幅に落ちますが、固定式インプラント(オールオン4やインプラントブリッジ)は顎の骨に直接固定されているため、総入れ歯では避けていた固い食べ物も噛みやすくなります。ただし、天然歯と完全に同じ咬合力に戻るわけではないため、「総入れ歯から大きく改善する」という前提で期待値を設定してください。

骨の吸収についても、総入れ歯を使い続けると骨は痩せ続けますが、インプラントが噛む力を伝え続けることで吸収速度が緩やかになります。ただし骨吸収が抑えられるのはインプラント周囲に限られ、埋入していない部位の骨吸収まで止まるわけではありません。

全顎インプラント治療のデメリットとリスク

一方で、以下のようなデメリット・リスクも理解しておく必要があります。

  • 自由診療のため費用が高額(オールオン4で片顎200〜400万円程度)
  • 外科手術を伴い、術後数日は腫れや痛みが出ることがある
  • 定期メンテナンスを怠るとインプラント周囲炎が進行し、脱落につながるリスクがある
  • 全身疾患(重度の糖尿病・心臓疾患・骨粗しょう症など)によっては治療を受けられないことがある

費用は判断を分ける大きな要素です。上下で400〜800万円程度の総額になり、保険適用の総入れ歯(片顎で約1.5万円)と比べると差は非常に大きくなります。

インプラント周囲炎は天然歯の歯周病より進行が速い点にも注意が必要です。インプラントには天然歯のような歯根膜(歯と骨のあいだにあるクッション組織)がないため、細菌感染への抵抗力が弱く、放置すればインプラントの脱落につながります。治療後も定期通院を続けられるかどうかを事前に検討してください。

骨粗しょう症でビスフォスホネート系薬剤を服用中の方など、全身状態によっては手術のリスクが高くなります。治療の可否はCT撮影と血液検査の結果をもとに、担当医と相談して判断する流れになります。

インプラントに関するよくある質問

インプラントに関するよくある質問

インプラントと総入れ歯で迷っているのですが、どちらがよいですか?

「噛む力」「費用」「メンテナンス」の3つの軸で考えると整理しやすくなります。噛む力と見た目を重視するならインプラント、費用を最も抑えたいなら保険適用の総入れ歯が選択肢になります。ただし、総入れ歯の不安定さやズレに強いストレスを感じている方は、まずインプラントオーバーデンチャー(入れ歯をインプラントで固定する方法)を検討してみてください。

総入れ歯からの移行がしやすく、費用もオールオン4より抑えられます。

全部の歯のインプラント治療は何本まで埋入できますか?

顎の骨の状態と治療法によりますが、片顎あたり4〜8本の埋入が一般的です。オールオン4であれば最少4本のインプラントで片顎12本分の歯を支えることができます。

手術中の痛みが心配です

インプラント手術は局所麻酔で行うため、手術中に痛みを感じることはほとんどありません。全顎の手術で手術時間が長くなる場合や、不安が強い方には、静脈内鎮静法(点滴で眠っているような状態にする麻酔法)を併用する方法もあります。術後は2〜3日ほど腫れや鈍い痛みが出ることがありますが、処方される鎮痛剤で対処できる範囲です。

まとめ

まとめ

歯を全部失っても、オールオン4・インプラントオーバーデンチャー・インプラントブリッジなど、少ない本数で全顎を補う方法があります。選ぶときは「自分の骨の状態」「何を重視するか」「予算」の3点が軸になります。

「骨が足りない」と言われた方でも、CTで正確に診ればGBR法やオールオン4の斜め埋入で対応できる場合があります。辻岡歯科医院は開院から40年以上、ストローマンインプラントによる全顎治療・オールオン4・GBR法に対応し、CTによる精密診断のうえでお一人お一人に合った計画をご提案します。総入れ歯や費用に悩んでいる方も、まずはご相談ください。

この記事の監修者

辻岡歯科医院

院長 辻岡敬志

地域に根差して40年の辻岡歯科医院では、皆様がご自身の歯でいつまでも楽しく食事ができ、すてきな笑顔で日々を送れるようサポートしています。インプラントをはじめ幅広い治療が可能なので、お口のお悩みはどのようなことでもご相談ください。一人ひとりに寄り添い、適切な治療計画をご提案し、人生のQOL(生活の質)の向上に貢献します。

■ 経歴

  • 1979年:城西歯科大学 卒業
  • 1979年:和歌山県立医科大学歯科口腔外科 入局
  • 1982年:辻岡歯科医院 開院

【インプラント治療に関する重要事項】

インプラント治療は公的医療保険が適用されない自由診療です。

  • 治療内容:顎の骨にチタン製の人工歯根(インプラント体)を埋入し、その上に人工の歯を装着する治療
  • 治療期間・回数:一般的に3〜10ヶ月程度。埋入手術・アバットメント装着・上部構造装着の3段階で進行(個人差あり)
  • 費用の目安:1本あたり30万〜50万円程度。骨造成が必要な場合は追加費用が発生します。詳しくはクリニックへお問い合わせください
  • リスク・副作用:術後の腫れ・出血・痛み・しびれ、インプラント周囲炎、上部構造の破損など

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