インプラントは痛い?手術中と術後の実際の痛みを歯科医師が解説
2026.08.10

インプラントは「歯茎を切って骨にネジを埋める」と説明されるため、手術中の痛みを想像して不安になる方が多い治療です。結論から言うと、手術中は局所麻酔が効いた状態で進めるため痛みはほぼ感じず、痛みの中心は麻酔が切れた後から数日間の術後期間にあります。
この記事では、手術中と術後それぞれの段階で「何が、どのくらい痛むのか」を、治療の範囲ごとに整理します。
インプラント手術中の痛み

手術中の痛みを決めるのは、麻酔が行き届いているかどうかの一点です。骨そのものには痛みを感じる神経がなく、痛覚があるのは歯茎と歯茎の内側の膜の部分ですが、この部分は局所麻酔でコントロールできます。
麻酔が効いていれば骨を削る痛みは感じない
麻酔は歯茎への注射で行いますが、先に表面麻酔(ジェル状の麻酔)を塗ってから注射をするので、針を刺す瞬間の痛みも軽くできます。麻酔がしっかり効いていれば、骨を削る間も痛みを感じることはほとんどありません。
麻酔が効いた状態で感じるのは、痛みではなく「振動」と「音」です。骨に響く振動や器具の音が続くと不安に感じるのは自然なことで、手術中に何が起きているか見えない時間が続くほど、その不安は強くなります。万一手術中に痛みを感じたときは麻酔の追加で対応できるため、我慢せず担当医に伝えてください。
痛みや音への不安が強い方は「鎮静剤」の選択肢も
針を刺す瞬間への恐怖が強い方、過去の歯科治療で麻酔が効きにくかった経験がある方、音や振動そのものがトラウマになっている方は、通常の局所麻酔だけでは気持ちの負担が大きくなります。この場合は、点滴で鎮静剤を入れる「静脈内鎮静法」を選ぶ方法があります。眠っているようなうとうとした状態で手術を受けられるため、時間の感覚が曖昧なまま治療が終わります。
静脈内鎮静法は自由診療の追加処置で、施術中は麻酔医が生体モニターで全身状態を継続的に管理する必要があるため、対応しているクリニックは限られます。
なお、当院では麻酔医が在籍しており、静脈内鎮静法に対応しています。
手術後の痛みはいつから、いつまで続くか

痛みの本体は麻酔が切れた後に始まります。ここからが多くの方が気にしている段階かと思います。1本だけのシンプルなインプラントと、骨造成を伴うケースでは痛みの強さ・期間が違うため、分けて理解しておく必要があります。
1本だけのインプラントの痛みと腫れ
麻酔は手術後3〜4時間ほどで切れます。切開と縫合をした分の痛みが出始めるのがこのタイミングで、痛みのピークは術後1〜2日、遅くとも1週間ほどで落ち着くのが一般的な経過です。処方される鎮痛剤(ロキソニンなど)でコントロールできる方が大半です。
腫れは痛みより少し遅れて出ます。術後2〜3日でピークになり、1〜2週間で元に戻るのが通常です。上顎の前歯のように皮下組織が薄い部位では目立ちやすく、下顎の奥歯では外見上ほとんど腫れないこともあります。
骨造成を伴う場合は痛みと腫れが長引く
顎の骨の厚みや高さが足りない方には、インプラントを埋めるための骨を作り足す「骨造成」を一緒に行います。当院で用いているGBR法はその代表的な方法で、骨の材料を人工膜で覆って骨の再生を待ちます。骨を作り足す処置が加わる分、切開範囲が広く、治る過程の炎症も大きくなります。
骨造成を伴うインプラント手術の場合、痛みと腫れは術後3日をピークに、おおむね10日ほど続きます。内出血による青あざが頬や目の下に現れることもあり、これは1〜2週間かけて黄色く変化しながら引いていきます。骨を作り足した範囲が広い分、腫れや内出血が引くまでに時間がかかりますが、通常の経過です。
痛み止めの使い方で経過が変わる
術後の痛みは、鎮痛剤を「痛くなってから飲む」のではなく、「麻酔が切れる前に1錠目を飲む」方が穏やかに過ごせます。痛みが強くなってから飲むと、薬の効き始めるまでの時間をつらく過ごすことになり、「効かない」と感じやすくなります。
抗生物質は感染予防のために処方されます。症状が軽くても、処方された日数分を飲み切ってください。途中で止めると細菌が残り、後から感染を起こす原因になります。
痛み止めは痛みが治まれば止めてよい薬、抗生物質は指示された日数まで飲み切る薬、という使い分けを覚えておくと迷いません。
術後の痛みが長引くときに疑うこと

術後の痛みは時間とともに軽くなっていくのが通常の経過です。「日が経っても痛みが引かない」「むしろ強くなる」「腫れが1週間を超えて大きくなる」この場合は何らかのトラブルのサインと考え、早めに連絡してください。
感染(インプラント周囲炎)
手術した部分に細菌が入ると、術後1週間を過ぎても痛みが引かず、むしろ強くなってきます。歯茎の腫れが赤く熱を持ち、場合によっては膿が出てくることもあります。1週間を超えて痛みが増していく場合は感染を疑うサインで、放置すると骨にまで炎症が広がり、せっかく埋めたインプラントが支えを失うことになります。
この段階で連絡を受ければ、抗生物質の追加や局所の洗浄で対応できることがほとんどです。「週末をまたげば治まるかも」と様子を見ず、痛みの質が変わったと感じた時点で連絡をしてください。
神経に近い場所で出る痛みとしびれ
下顎の奥歯にインプラントを入れる場合、下顎の骨の中を通っている太い神経(下歯槽神経)との距離が問題になります。この神経に器具やインプラント体が近づきすぎると、手術後に唇や頬、舌の一部がしびれる症状が残ることがあります。しびれは「痛い」というより「正座の後のように感覚が鈍い」感じで、痛みとは質が違います。
この合併症を防ぐために、CT撮影で神経の走行位置を三次元で確認してから治療計画を立てます。神経までの距離をミリ単位で計測し、安全な距離を確保してインプラントを設計するのが、現在のインプラント治療の標準的な流れです。
それでも完全にゼロにはできないため、「術後にしびれや麻酔が効いたような感覚が続く」場合は、自己判断せずすぐに連絡してください。早期に対応するほど回復の見込みが高くなります。
噛み合わせが原因の「噛むと痛い」
インプラントが骨と結合し、被せ物を装着した後、噛むときだけ痛みが出ることがあります。この場合の多くは、噛み合わせの調整不足が原因です。インプラントは天然の歯と違って、歯根膜という衝撃を吸収するクッションがありません。
そのため、わずかに高めに被せ物ができていると、噛むたびに骨に直接力が伝わり、違和感や痛みとして現れます。
噛み合わせの調整は被せ物を削って行う簡単な処置で、その場で解決することが多いトラブルです。「最近噛むと違和感がある」と感じたら、早めに調整を受けることで、インプラントと周囲の骨への負担を減らせます。
痛みの不安を下げるためにカウンセリングで聞いておくこと

インプラント手術の痛みの多くは「予想外の痛み」から来ます。何がどのくらい痛いかを事前に具体的に知っておけば、同じ痛みでも受け止め方が大きく変わります。疑問を残さずに当日を迎えるために、カウンセリングで以下の2点を確認しておきましょう。
骨の量と骨造成の必要性を確認する
インプラントを支える骨が十分にあるかどうかは、術後経過の長さを左右します。骨が足りない場合は「骨造成」という骨を増やす処置を一緒に行うため、腫れと痛みが術後10日ほど続きます。骨が十分な場合は1週間以内で落ち着くので、自分はどちらのパターンになるかを聞いておくと、術後の経過を「予想内の変化」として受け止めやすくなります。
「自分の手術がどのくらい大がかりか」を知っているだけで、術後の痛みの受け止め方は変わります。CTやレントゲンで骨の状態を確認したうえで治療計画を立てるクリニックであれば、この説明はカウンセリングの段階で受けられます。
鎮静剤の対応可否と追加費用を確認する
痛みへの恐怖が強い場合の対応があるかも、当日の心構えを大きく左右します。鎮静剤を使用できるか、追加費用はいくらかを確認しておくと、手術日のストレスが大きく変わります。
歯科治療で麻酔が効きにくかった経験がある方、針への恐怖が強い方は、この選択肢があるかどうかで手術日の不安の大きさが変わります。鎮静剤に対応していないクリニックの場合、別のクリニックを検討する判断材料にもなります。
手術日は「静かに過ごせる日」を選んでおく

手術当日から翌日は、強い運動・長時間の入浴・飲酒は避けます。血流が上がる行動は、腫れと内出血を大きくします。会議や接客などの予定を入れず、自宅で静かに過ごせるスケジュールを組んでおくと、痛みと腫れの経過を穏やかに過ごせます。
骨造成を伴う場合は、術後3日ほどは予定を空けておくのが安心です。頬が腫れている期間は人前に出にくいと感じる方もいるため、仕事やイベントの予定と重ならない時期を選んで手術日を決めると、気持ちの負担も小さく済みます。
インプラントの痛みに関するよくある質問

インプラントの痛みは天然の歯を抜くときと比べてどのくらいですか?
切開・縫合の範囲が増える分、抜歯よりは痛みや腫れが大きくなる傾向があります。ただし、1本だけのインプラントで骨造成を伴わない場合は、難しい親知らずの抜歯と同程度の経過で収まることが多く、鎮痛剤でコントロールできる範囲です。
骨造成を伴う場合は痛み・腫れともに長引くため、別のものと考えたほうが実態に近くなります。
鎮痛剤が効かないと感じたときはどうすればいいですか?
鎮痛剤は、指示された間隔を守って規則的に飲むことで効きやすくなる薬です。「楽になってきたから次の分は飲まなくていいだろう」と服用間隔を空けると、薬が切れたタイミングで痛みがぶり返し、「効かない」と感じやすくなります。痛みが軽くても、次の服用時間が来たら予定通り飲むようにしてください。
それでも効果が感じられない、痛みが強くなっていく場合は、鎮痛剤の種類を変えるか、別の原因(感染など)を疑う必要があるため、連絡を入れてください。
手術当日にお風呂に入ってもいいですか?
手術当日はシャワー程度にとどめるのが無難です。湯船に浸かると血流が上がり、出血や腫れの原因になります。翌日以降、出血が止まっていれば短時間の入浴は可能になりますが、長湯は1週間ほど避けるほうが経過が穏やかです。
詳しい時期は担当医の指示に従ってください。
鎮痛剤は手術前に飲んでおくほうがいいですか?
当日の朝に事前服用するかどうかは、医師の指示に従ってください。自己判断で市販の鎮痛剤を追加すると、処方薬との飲み合わせで効きすぎたり、胃への負担が大きくなることがあります。
まとめ

インプラントの痛みは、手術中ではなく麻酔が切れた後から始まります。1本だけで骨造成を伴わない場合は術後ピーク1〜2日・1週間以内に落ち着くのが一般的で、骨造成を伴う場合は3日をピークに10日ほど続きます。痛みが予想より長引く、強くなる、という経過は通常ではないため、我慢せずに連絡をしてください。
痛みの不安を小さくする最大のポイントは、自分の手術がどの範囲かを事前に具体的に知っておくことです。辻岡歯科医院では、CT撮影で神経までの距離と骨の量を確認したうえで、一人ひとりの症例に合わせた治療計画を立てています。インプラント治療を検討中で痛みについて気になることがある方は、骨の状態や鎮静剤の対応も含めて、カウンセリングでお気軽にご相談ください。
この記事の監修者
辻岡歯科医院
院長 辻岡敬志
地域に根差して40年の辻岡歯科医院では、皆様がご自身の歯でいつまでも楽しく食事ができ、すてきな笑顔で日々を送れるようサポートしています。インプラントをはじめ幅広い治療が可能なので、お口のお悩みはどのようなことでもご相談ください。一人ひとりに寄り添い、適切な治療計画をご提案し、人生のQOL(生活の質)の向上に貢献します。
■ 経歴
- 1979年:城西歯科大学 卒業
- 1979年:和歌山県立医科大学歯科口腔外科 入局
- 1982年:辻岡歯科医院 開院
【インプラントに関する重要事項】
インプラント治療は公的医療保険が適用されない自由診療です(一部の先天性疾患・顎骨欠損等を除く)。
- 治療内容:顎の骨にチタン製の人工歯根(インプラント体)を埋入し、その上にセラミック等の人工歯を装着する治療
- 治療期間・回数:一般的に3〜6ヶ月程度。骨造成が必要な場合はさらに数ヶ月追加(個人差あり)
- 費用の目安:1本あたり30万〜50万円程度。骨造成・歯肉移植が必要な場合は追加費用が発生します
- リスク・副作用:術後の腫れ・痛み・内出血、インプラント周囲炎、神経損傷(まれ)、上顎洞への穿孔(まれ)、インプラント体の脱落など