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奥歯のインプラントができないと言われたら…原因と対処法を知って次の一歩を

2026.07.31

奥歯のインプラントは上顎洞や神経との距離、骨の量などから前歯より難しくなりやすく、「今のままでは難しい」と言われることがあります。

この記事では、奥歯のインプラントが難しいと判断される理由と、骨造成などで対応できる可能性、入れ歯・ブリッジも含めた選択肢を整理します。

奥歯のインプラントが「できない」と言われる主な原因

奥歯のインプラントが「できない」と言われる主な原因

奥歯のインプラントが「できない」と言われる理由は、大きく分けて2つあります。1つは奥歯特有の解剖学的な問題、もう1つは全身の健康状態による制限です。

上の奥歯は鼻の空洞(上顎洞)が近い

上顎の奥歯の上には、上顎洞(じょうがくどう)という空洞があります。鼻の横に広がるこの空洞は、もともと奥歯の根の先と近い位置にあるのですが、歯を抜くと骨が徐々にやせていき、上顎洞との距離がさらに短くなります。インプラントを埋め込むには一般的に8〜10mm程度の骨の高さが必要ですが、上顎の奥歯では骨の高さが5mm以下まで減っているケースも珍しくありません。

骨の高さが足りないままインプラントを埋入すると、上顎洞の粘膜を突き破ってしまい、上顎洞炎(いわゆる蓄膿症のような症状)を引き起こすリスクがあります。これが「上顎の奥歯はインプラントが難しい」と言われる最も多い理由です。

下の奥歯は神経・血管が近い

下顎の骨の中には「下顎管」と呼ばれるトンネルが通っています。この中を下歯槽神経(かしそうしんけい)と血管が走っていて、下顎の奥歯のインプラント埋入時にはこの神経を傷つけないことが絶対条件です。CT画像で神経までの距離を計測し、神経から少なくとも数mmの安全マージンを確保する必要があるため、骨の高さに余裕がないケースではインプラントの長さに制限がかかります。

万が一、神経に触れてしまうと、下唇やあご周辺のしびれ・感覚異常が残る可能性があります。このリスクを避けるために、骨の量が十分でない場合には「できない」と判断されることがあるのです。

全身疾患や口腔内の問題

奥歯に限った話ではありませんが、以下のような全身的・口腔内の問題がある場合、インプラント治療自体が難しくなります。

  • 重度の糖尿病でコントロールが不良な方
  • 重度の歯周病が進行中の方
  • 心臓疾患や脳血管疾患で抗凝固薬を服用中の方
  • ヘビースモーカーの方
  • 顎の骨の成長が完了していない若年者
  • 妊娠中の方

ただし、これらは「永久にできない」ではなく「今の状態では手術リスクが高い」という判断です。糖尿病のコントロールが改善すれば手術が可能になることもありますし、歯周病の治療を先行させてからインプラントに進むケースは多くあります。

骨が足りなくてもインプラントを可能にする方法

骨が足りなくてもインプラントを可能にする方法

「骨が足りない」は奥歯インプラントで最も多い壁ですが、現在の歯科医療にはこの壁を越える方法がいくつかあります。どの方法を選ぶかは、骨の不足量と不足箇所で決まります。

GBR法

GBR法は、骨が不足している部分に人工骨や自家骨を置き、特殊な膜で覆うことで骨の再生を促す方法です。膜で覆う理由は、歯肉の細胞が骨より先に入り込むのを防ぎ、骨の細胞がじっくり成長できる環境を作るためです。骨が再生するまでの期間は一般的に4〜6ヶ月程度で、その後にインプラントを埋入します。

骨の幅や高さが部分的に足りないケースで広く使われる方法です。

サイナスリフト・ソケットリフト

上顎の奥歯で骨の高さが足りない場合には、上顎洞底挙上術(じょうがくどうていきょじょうじゅつ)が選択肢になります。上顎洞の底にある粘膜を持ち上げ、そのスペースに骨補填材を入れて骨の高さを確保する方法です。

術式適応特徴
ソケットリフト既存の骨の高さが5mm程度以上ある場合インプラントを入れる穴から粘膜を押し上げるため、傷が小さく体への負担が軽い。インプラント埋入と同時に行えることが多い
サイナスリフト既存の骨の高さが5mm未満の場合上顎の側面から小さな窓を開けて粘膜を広く持ち上げる。骨が大きく不足しているケースに対応できるが、回復までに6ヶ月程度かかる場合がある

どちらの術式が適切かはCT撮影で骨の高さを正確に計測したうえで判断します。

ショートインプラント

通常のインプラントは長さ10mm前後ですが、ショートインプラントは5〜8mm程度の短い設計になっています。骨造成の手術をせずに、今ある骨の範囲内でインプラントを埋入できる可能性がある方法です。短い分、直径を太くすることで骨との接触面積を確保する設計になっています。

骨造成手術の負担を避けたい方にとって有力な選択肢ですが、骨の状態によっては対応できない場合もあり、CT画像による精密な診断が前提になります。

それでもインプラントが難しい場合の代替治療

それでもインプラントが難しい場合の代替治療

骨造成を行ってもインプラントの条件を満たせない場合や、全身疾患などでインプラント手術自体が難しい場合には、ほかの方法で奥歯の機能を取り戻すことになります。奥歯を1本失ったまま放置すると、反対側の歯に噛む力が集中して摩耗が進み、隣の歯が傾き、噛み合っていた歯が伸びてくるといった変化が数ヶ月〜数年で起こります。奥歯の欠損を放置すると残っている歯の寿命にも影響するため、インプラントが難しい場合でも何らかの方法で噛み合わせを維持することが必要です。

ブリッジ

失った奥歯の両隣に歯が残っている場合、それらの歯を土台にして連結した被せ物を装着する方法です。固定式なので入れ歯のような着脱はなく、噛む感覚も比較的自然です。ただし、土台にする歯を削る必要があるため、健康な歯に負担がかかるという面があります。

奥歯が一番奥の歯(第二大臼歯など)の場合は、片側にしか土台がないためブリッジの設計が難しくなります。

保険診療で対応できるケースが多く、費用面ではインプラントより大幅に抑えられます。

部分入れ歯

金属のバネ(クラスプ)を隣の歯にかけて固定する取り外し式の装置です。ブリッジのように健康な歯を大きく削る必要がない点がメリットですが、咀嚼力は天然歯の3割程度にとどまり、硬い食べ物を噛み砕く力はインプラントやブリッジに劣ります。また、バネをかける歯に負担がかかること、食後に外して洗浄する手間がかかることは知っておく必要があります。

自由診療の入れ歯(金属床義歯やノンクラスプデンチャーなど)を選ぶと、薄くて違和感が少ない、バネが見えないといった改善が可能ですが、費用は上がります。

奥歯のインプラントの費用と治療期間の目安

奥歯のインプラントの費用と治療期間の目安

カウンセリングで見積もりや治療計画を比較する際の判断材料として、それぞれの目安を整理します。

費用の内訳

奥歯のインプラント治療の費用は、おおむね1本あたり30万〜50万円程度が目安です。この費用には検査・診断料、インプラント体の埋入手術、上部構造(被せ物)の製作・装着が含まれるのが一般的ですが、骨造成手術が必要な場合はその分が追加されます。

費用項目目安
検査・診断(CT撮影含む)数万円程度
インプラント埋入手術20万〜30万円程度
上部構造(被せ物)10万〜15万円程度
骨造成(GBR・サイナスリフト等)5万〜20万円程度(術式・範囲による)

費用を左右する最大の要因は骨造成の有無と術式です。骨が十分にある方はインプラント本体の費用だけで済みますが、サイナスリフトが必要なケースでは10万〜20万円程度が上乗せされます。正確な費用は口腔内の状態を診査したうえでお伝えします。

治療期間の目安

インプラントが骨と結合するまでの期間は、一般的に下顎で2〜3ヶ月、上顎で4〜6ヶ月程度です。骨造成を先行させる場合は、骨が安定するまでの待機期間(4〜6ヶ月程度)が加わるため、トータルの治療期間は6ヶ月〜1年程度になることが多くなります。

「すぐに噛めるようにしたい」という方には、治療期間中に仮歯や暫間的な入れ歯を使って噛み合わせを維持する方法もあります。治療期間が長くなるからといって、その間ずっと歯がない状態で過ごすわけではありません。

奥歯のインプラントに関するよくある質問

奥歯のインプラントに関するよくある質問

他の歯科医院で断られた場合、別の医院なら治療できることはありますか?

骨造成手術やショートインプラントに対応しているかどうかは歯科医院によって異なります。CT撮影設備があり、GBR法やサイナスリフトなどの骨造成に対応している医院であれば、別の判断になることは珍しくありません。「できない」と言われた場合は、骨造成の経験がある歯科医院でセカンドオピニオンを受けてみる価値があります。

インプラントと入れ歯で噛む力にどのくらい差がありますか?

インプラントは骨に直接固定されるため、入れ歯やブリッジに比べて天然歯に近い咬合力を回復しやすいと言われています。一方、入れ歯は歯茎で支える構造のため噛む力が大きく低下します。奥歯は食べ物をすりつぶす役割を担うため、この差は日々の食事の快適さに直結します。

骨造成手術は痛いですか?

手術中は局所麻酔が効いているため痛みはほとんどありません。術後2〜3日は腫れや鈍い痛みが出ることがありますが、処方する痛み止めでコントロールできる範囲です。サイナスリフトのように範囲が広い手術では腫れが1週間ほど続くこともありますが、日常生活に支障が出るほどの痛みが長引くケースは多くありません。

まとめ

まとめ

奥歯のインプラントが「できない」と言われる背景には、上顎洞や下歯槽神経との距離、骨の量、全身状態といった明確な理由があります。骨造成(GBR法・サイナスリフト)やショートインプラントで対応できるケースも多く、「断られた=もう無理」とは限りません。

ただし、すべてのケースでインプラントが最善とも限らず、ブリッジや入れ歯が合う場合もあります。辻岡歯科医院では、CTで骨の量・上顎洞や下歯槽神経との距離を精密に診断したうえで、骨造成・ショートインプラント・ブリッジ・入れ歯まで含めて選択肢を比較し、ご自身の状態に合った方法をご提案します。「他院で断られたが、本当にできないのか確認したい」という方も、まずはご相談ください。

この記事の監修者

辻岡歯科医院

院長 辻岡敬志

地域に根差して40年の辻岡歯科医院では、皆様がご自身の歯でいつまでも楽しく食事ができ、すてきな笑顔で日々を送れるようサポートしています。インプラントをはじめ幅広い治療が可能なので、お口のお悩みはどのようなことでもご相談ください。一人ひとりに寄り添い、適切な治療計画をご提案し、人生のQOL(生活の質)の向上に貢献します。

■ 経歴

  • 1979年:城西歯科大学 卒業
  • 1979年:和歌山県立医科大学歯科口腔外科 入局
  • 1982年:辻岡歯科医院 開院

【インプラント治療に関する重要事項】

インプラント治療は公的医療保険が適用されない自由診療です。

  • 治療内容:顎の骨にチタン製の人工歯根(インプラント体)を埋入し、その上に人工の歯を装着する治療
  • 治療期間・回数:一般的に3〜10ヶ月程度。埋入手術・アバットメント装着・上部構造装着の3段階で進行(個人差あり)
  • 費用の目安:1本あたり30万〜50万円程度。骨造成が必要な場合は追加費用が発生します。詳しくはクリニックへお問い合わせください
  • リスク・副作用:術後の腫れ・出血・痛み・しびれ、インプラント周囲炎、上部構造の破損など

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